
電力が不足しているみたい・・・これって何か影響するの?
こんにちは、はらだっちです。(@SHaradacchi)2021年1月の電力ひっ迫について電力会社の中の人の僕が解説します!

目次
本記事の内容
- 新電力の市場連動型プランがやばい
- 電力不足の背景
- 今後の電力関連の予想
電力がひっ迫していて、停電危機のようなニュースが報道され始めています。
梶山経済産業大臣は記者会見で、厳しい寒さが続き足元の電力需給がひっ迫しているとしたうえで、暖房の利用など、ふだんどおりの生活を続けつつ電気を効率的に使ってほしいと呼びかけました。
確かに都心でも雪が降りそうと報道があるくらい寒いですが、ここまで電力がひっ迫する状況なのはどうしてでしょうか?
電力ひっ迫が与える影響を、外資系電力会社の中の人である僕が解説します。
新電力の市場連動型プランがやばい
結論です。
- 新電力と市場連動型プランで契約している人はやばい
- 電力代が数倍になる恐れ
- 理由は電力会社の仕入れ価格が記録的に高いから
電力の40%程度は、JEPXという場所で取引されています。
新電力と呼ばれる会社はJEPXで取引をしていることが多いです。
JEPXとは?
- Japan Electric Power eXchangeのこと
- 日本卸電力取引所
- 電力の取引を行う場所
- 発電所はJEPXを通して電力を販売し、小売は電力を仕入れる
新電力と市場連動型プランで契約している人はやばい


市場連動型の電力プランは、普段は安いものの市場価格が高騰するとその影響を受けてしまうことがあります。
今回は東日本大震災依頼の電力危機が起きているために、市場価格が記録的な高さになっています。
電力代が数倍になる恐れ
Twitterでも、いくつかの声が上がっています。
電気代の市場価格高騰にともない、市場連動型プランの場合はマジやばい。下手するといつもの3倍以上の電気代になる可能性も十分ある状況。
エルピオでんき、自然電力、おてらのでんき、ダイレクトパワー、ジニーエナジーあたりを契約してる人は要注意!
すぐ確認した方がいいです。— ケイジ (@denpakutaro) January 9, 2021
電気代、1日5000円超えるとか罠すぎる。
市場連動型の電気契約はみんなしちゃいけないぞ。今月10万円コースになる。。。
— ITコンサル中野 (@beermanNakano) January 11, 2021
もし電気代10万いったら、今月の私の給料で払ったら8000円しか残らない計算になる
— マトン (@CzdUf) January 11, 2021
不運にも普段の15倍ほどの電気代がかかる家になっているので、コンロで湯を沸かし続けて暖を取るという限界状態になっている
— い (@kedasi_) January 11, 2021
実際に僕の友人も1月13日時点で、自然電力の速報値で電気代が15万円を超えているそうです。
理由は電力会社の仕入れ価格が記録的に高いから
JEPXの価格が異常に高騰しています。

引用:https://project.nikkeibp.co.jp/energy/atcl/19/feature/00007/00044/jepx-fig1.png

12月からの上昇カーブがすごいです。
今までの市場価格は10円/kWhよりも安かったのに、上がっています。
2021/1/13には222円/kWhを記録しています!
下記が2021年1月13日のシステムプライスです。

引用:JEPX
電力会社勤務ですが、この価格は見たことがない異常な高値です。
電力不足の背景
色々と複雑な事象があるのですが、誤解を恐れずにシンプルに言えばこういった流れです。
オーストラリアが対中姿勢を強める
↓
中国逆ギレでオーストラリア産石炭を輸入制限
↓
中国国内の電力が不足し、LNG輸入を急増させる
↓
同時に韓国でも石炭発電所を16基止める
↓
LNG需給の制約により大手電力各社の在庫が減少
↓
強烈な寒波の襲来
↓
電力市場のスポット取引価格が急騰中 ← イマココ
LNGは貯蔵にコストがかかるため、日本では2週間程度の在庫しかないと言われています。
そのため、一度不足すると急激に問題が表面化します。
JEPXスポット価格高騰の背景
下記5つと言われています。
- 韓国が石炭発電所を16基とめた
- 中国がLNG輸入を大きく増加
- 日本を含む北東アジアの気温低下
- 供給元カタールでの供給問題
- 米国からのLNG輸入がパナマ運河で渋滞
韓国は微粉塵排出量削減対策として、この冬に60基もっている石炭発電所のうち16基を休止して、その分LNG発電にうつしています。
中国のLNG輸入量は、12月前月比40%増の900万トン超です。習近平政権の推進するゼロ・エミッション政策と、外交問題でオーストラリアから石炭輸入の規制があるとも言われています。
日本でも寒波が来ていますが、寒波は日本だけではなく北東アジア全体に来ていて、どこも寒いため需要が高くなっています。
LNGを供給しているカタールではメンテナンスと突発的なコンプレッサーの問題で輸出量が減少しています。
米国からのLNG輸入についても、コロナウイルスによる人員不足でパナマ運河での通過手続きに遅れが生じています。
ちなみに11月中旬にはLNGスポット価格指標では、100万BTUあたり6ドル代でしたが直近では20ドル程度の取引となっています。
LNGの価格が急激に上がったのが理由です。
根本的にはLNGに頼りすぎ?
2011年の東日本大震災以降は、原子力発電の減少分をLNGでカバーするように発電をしており、40%近くをLNGによる火力発電で占めています。
世界的に石炭火力発電からの脱却トレンドがあり、原子力が使えない、自然エネルギーは増加しているけど不足、そうするとLNGが増えるのはしょうがない部分もあります。
今後の電力関連の予想
今後の予想です。
- この状況は1ヶ月は続く
- 新電力は2~3ヶ月後に、破綻するところが出てくる
- 中長期的にはLNGの見える化
この状況は1ヶ月は続く
今のLNGの状況はすぐになんとかなる問題ではありません。
LNGの調達には最低でも30日かかります。
新しい調達先を見つける、契約する、日本に持ってくるで最低でも1ヶ月くらいは今の状況が続くのではないでしょうか。
新電力は2~3ヶ月後に、破綻するところが出てくる
JEPXからの調達に頼っている新電力は、利益が飛ぶとかそういうレベルではないと思います。
先日の容量市場の約定価格に加えて、原価や想定利益を考えると、売上の2~5倍くらい赤字を背負っている会社がありそうです。
事業精算を考えるところが増えてくるでしょう。
中長期的にはLNGの見える化
LNGタンクの在庫状況を情報公開する流れになりますね。
灯油やガゾリンの在庫情報は石油連盟が公開しています。
海外ではLNGタンクの在庫情報を公開しています。
日本の電力市場の情報公開がより積極的にならざるをえない流れになるでしょう。
まとめ
下記を解説しました。
- 新電力の市場連動型プランがやばい
- 電力不足の背景
- 今後の電力関連の予想
今回の問題は、燃料不足が原因です。
発電設備(kW)ではなく、燃料(kWh)の安定性が論点です。
これらは発電設備(kW)の意見。
- 原子力が稼働していないから。
- 再エネが増えすぎ。
- 石炭火力やめるべきと言い過ぎ。
まずは少しでも節電をして、この危機をのりこえましょう!